日本顎咬合学会が対外マスコミ展開

日本顎咬合学会が対外マスコミ展開:日刊ゲンダイに連載スタート

 

6月24日から、日刊ゲンダイ(日刊現代発行・部数160万部)で、「長生きしたけゃ最後は噛む力」を医療ジャーナリスト・油井香代子による連載が始まった。日本顎咬合学会監修を得た形式になっているが、新しい企画である。歯科学会内での広報・PRなどは既に周知されているが、その効果の判断はこれからによる。販売部数は160万部との称されている。歯科関係情報を市民向けの媒体を介して広報活動を展開し、多くの市民に理解を促す狙いがありそうだ当然、コストパフォーマンスが懸念されるが、今日に至り、歯科界・歯科学会の広報戦略にも、ある意味で限界を理解しながら新規の企画を検討・実施したといえそうだ。“歯科とマスコミ”の扱いは、業界の問題や事件発生時に“クローズアップ”されるパターンが繰り返されてきた。また、歯科が扱う内容から、組織・団体が厚生記者会・日比谷クラブにて単独による記者会見は、基本的に開催されることは稀なケースになっている。

今回の第1回の連載の内容は、“咬合”について歯科界では既に周知されており、データや論文からの引用を紹介。「MYヘルスアップ研究会(2004)、「口腔保健と全身的な健康状態の関係について(2012)」からのデータを参考に臨床データから可能な数字を紹介している。「歯周病」との関係において、「糖尿病」「心臓病」「低温体重出産」「肺炎」「がん」などと関係があるだけでなく、寿命に影響していることが判明してきていると改めて報告している。これらの情報は歯科界としては十分理解されていることであるが、“日刊ゲンダイ”読者に知らせる意味を期待しての連載。

さらに、歯の喪失による問題点も報告している。咀嚼が不十分により短命になること、高齢者の寝たきりの原因も歯が関係していると況報告している。認証リスク、転倒リスク、湯介護認定リスクなどが高くなることが明確になっていると報告が出されており、たとえ“義歯”でも、その必要性があるとされれば、その使用の重要性を指摘していた。

 

口腔ケアの大切さにも言及している。次期日本顎咬合学会理事長に予定されている金沢紘史氏のコメントも掲載されている。近年の口腔ケアの注目関係して、静岡県の米山正義歯科医師などの研究、千葉大医学部付属病院の調査、先駆的に取り組んできた静岡がんセンターからのがん患者を含めた実施の効果資料を紹介。なお、記事中にある中見出し「がんセンターも始めた口腔ケア」は読者に訴える効果はありそうだ。さらに俵木勉・同学会学会監事は次のように簡潔にまとめている。「口が健康だと食事をきちんととることがで、誤嚥性肺炎などの感染予防になる。それが入院期間の短縮や治療成績に影響するそうです」「咀嚼能力の回復が脳卒中後のリハビリの効果を高める研究もあり、口の健康は、病気回復にも影響を与えているのです」。

 

【編集後記】

静岡がんセンターで、がん患者の口腔ケア実施先駆者になったのが、故太田洋二郎歯科医師(北大歯学部卒)。がん患者の口腔合併症の予防・軽減を目的とした、医科歯科連携を2006年に実施し、歯科界に話題を呼んだ。現在は、通常通り必要なら実施されている術式であるが、先駆者の意を尊重していくのが臨床の歴史なると言えそうだ。がんセンターでも口腔外科と同時に“口腔ケア”の介入に困惑があったようだが、当時「歯科衛生士にも頑張ってほしい。今後は期待している」と将来を見据えていた。