歯科技工って!

集英社オンラインで森野日技会長 歯科技工を説明:ネット反応に注目当医院にて、特殊な半調整咬合器を使用して、正常の咬合を決めてマウスピース等を作成

Yahoo Jjapanからのニュース(622日付)が、興味深い企画として配信された。615、集英社オンラインで、森野日技会長へのインタビュー形式で歯科技工について現状を説明したものである。ネットで取り上げられたことで、関係者はその読者数に期待するが、一方で、その反応が気になるところでもある。要旨は以下の通り。

 

虫歯や歯周病に限らず、歯の心配をせずに一生を終えることのできる人は皆無に近いだろう。 しかし、それだけ身近な歯の健康を歯科医とともに守ってきた「歯科技工士」(歯科医の指示書に従い、入れ歯や歯の被せ物・詰め物などを作成・加工・修理する人)が、業界もろとも沈没しかねないほど、苦境に立たされていることはあまり知られていない。 現在、歯科医の指示書に従い、入れ歯や歯の被せ物・詰め物などを作成・加工・修理する「歯科技工士」の人材不足と、一部の歯科医によるダンピングが大きな問題となっている。6月4日は「64(ムシ)歯予防の日」だが、歯の健康を考える月間に、この問題について真剣に扱いされず、自由競争の名のもとにダンピング(不当廉売)を強いられる。 そうした構造的な問題は改善されずに放置され、それにより“担い手不足”が発生し、斜陽産業化にさらに拍車がかかる、という悪循環が続いている。このままではあなたも「入れ歯難民」になってしまうかもしれないのだ。

 

  関東地方で長年、歯科技工所(通称「ラボ」)を営むA氏が嘆息する。 「私たちが作っている被せ物や詰め物、入れ歯などの装置は、医療機器として認められず雑品扱いのため、保険点数が決まっているのに価格競争を強いられています。保険請求をするのは歯科医で、我々はあくまで下請けです。 医療機器であれば100%のはずの技工士の取り分も、国が何十年も前に『技工士と歯科医の取り分は73ぐらいが妥当じゃないですか』とガイドラインを提示しただけ。 実際は構造的にダンピングを余儀なくされるので、その割合はロクヨンになり、五分五分になり、場合によっては逆転することだってあります」。

 さらにA氏はこう続けた。 「保険点数は装置(技工物)に応じて決まっていて、たとえば5000円の被せ物があるとすれば、その内訳は材料費に加え、歯科技工士の技工料と歯科医の技術料で成り立っています。しかし、実際は歯科医がまとめて保険請求するので、たとえば同じ被せ物をA社が3000円、B社が2000円、C社が1000円で納品するとなれば、歯科医はC社に頼めば、自分の実入りが一番よくなります。 これが雑品でなく、医療機器として認められれば、装置の価格自体が同時になるので、歯科医も『じゃあ一番上手なラボに』と。

 

2024年61日施行の社会保険で歯科診療報酬改定で、40歳未満の勤務医(歯科含む)や勤務薬剤師、事務職員に加え、歯科技工所等で勤務する従事者への賃上げ措置として保険点数が引き上げられました。 ええ。ベースアップとしては2024年度に2.5%、2025年度にはさらに2%を目標としています。 ――しかし、歯科医師側がきちんと払うでしょうか。 そうですね。そこは検証しないといけません。厚労省も2年後の調査時に反映されているかどうかを調査すると明言しています。 その際に歯科技工士従業員の給与が上がっていないようであれば、次の診療報酬改定では、引き上げられた保険点数は削るでしょうね。「せっかく上げたのに、歯科医師が懐に入れたら引き上げた意味ないよね」となりますね。 ですから、われわれが歯科医院の先生方にお願いしたのは「歯科技工所がベースアップ、料金を上げたいと交渉に来ると思います。その時には、今回の点数加算が行なわれたことを踏まえて真摯に対応してください」ということです。 日本歯科医師会に地方の会員までしっかり伝えてください、という要望書を先日出しました。 ただ、現状ではこれが、われわれにできる精一杯なことです。「要望書を出しましたから、きちんと歯科技工料を上げる交渉をして下さい」まで。

 

最終的には、歯科医院と技工所の交渉になるので、 歯科医に要望書を出すような流れになったのは、賃金が安いという現場の声が多かったからですか。 それよりも、技工士のなり手の数が少なくなったことが大きいですね。ただこれは歯科医も同じことで、歯科医師は年間約3000人しか誕生しないから高齢化も進んでいるし、後継者不足も深刻と聞いています。中には開業しても、億単位の借金を背負ってしまう歯科医もいる。 そういう意味では、歯科技工士はまだいいと思うんですけどね。我々は地域に縛られず営業ができます。人によって違うと思いますが、1人の技工士が食べていくためには、仕事量によっても違いますが、取引先が10軒もあれば十分だ。

 

 

「保険点数を直接請求したい」という意見について。今は、患者さんの口に入る入れ歯や差し歯の全責任を歯科医師が負っています。技工士は歯科医から委託された技工物を作っています。それを直接請求するようになれば、われわれにも製作者としての責任が出てきますよね。 そもそもわれわれは、歯科医師から入れ歯の型や歯を形成した模型を預かって作るわけですが、型そのものがしっかり取れていなければ、世界一の技術をもったと言われる日本の技工士が作ってもきっちりとは入りません。 技工士の仕事はゼロからスタートするものではないんですよ。例えば、陶芸家が土を探し、こねて焼いて最初からやるのとは違うんです。我々の仕事のスタートである、患者さんから直接型をとるのは歯科医です。 そこに製作したものに対し責任が発生するとしたら、われわれは怖くて仕事を受けられなくなってしまうことも出てくると思います。

 

  歯科技工士と歯科医師、歯科衛生士を合わせたチーム医療により、患者さんにとって満足のいく入れ歯、差し歯を提供していきたいと思います。 技工士の多くが「ここを実現できたら」と要望されているのは、やはり73(技工料の取り分が技工士7割に対して、歯科医が3割)の部分でしょうか。 確かにそのような意見もあります。「概ね73」というのは1988年に大臣告示されたわけですが、「これを法制化して、歯科医にしっかり7割を歯科技工所に支払うようにしてくれ」というところじゃないでしょうか。 ただ、なぜ配分が73かというと、概ね7割が製作技工で、概ね3割が管理だからという決めごとなんです。診療報酬では、どこからどこまでの範囲というような細かな杭打ちが明記されていないのが現実です。これらを含め、難しい問題がたくさんあるから、36年たった今日でもこの問題が出てくるのだと思います。

 

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【編集後記】歯科技工士が一般週刊誌の企画対象なったのが斬新。しかも日技会長。内容はどうしても業界内部の細部に至ってしまうが“止む無し”と理解するしかないのか。一般市民が、関心を寄せてくれるかどうかも懸念される。“歯科医師と歯科技工士の関係”に行き着きポイントになることは承知のことだが。今までにない企画には、新たな期待はしたいが。

しかぎこうし
専門職

説明

歯科技工士は、歯科医師が作成した指示書を元に義歯や補綴物などの製作・加工を行う医療系技術専門職。 ウィキペディア
実施国 日本
試験形式 歯科技工士国家試験
認定団体 厚生労働省
資格種類 国家資格